TENDRE POISON ~優しい毒~
扉を開けた瞬間、二人と目が合った。
「水月!や!違うんだ!!これは」
まこが慌てて起き上がる。
何か言わなきゃ……そう思ってたけど言葉が出てこない。
喋る、という動作を忘れてしまったように、僕は固まったまま微動だにできずにいた。
まこの下敷きになっていた鬼頭がむくりと起き上がる。
「誤解です」
一言短く言ってパーカーで胸元を隠した。隠しきれてない肩の白さが眩しいほどだった。
「そう、誤解だ!」
いたたまれなかった。まこが弁解すればするほど、何だか惨めな気持ちにさせられる。
この場にいてはいけないのは、僕だけだ。
黙ったままくるりと方向を変えると、僕はリビングのドアノブに手をかけて扉を引いた。
「おい!水月。ちょっと待てって!」
まこが大またに僕の元へ来て、僕の肩を乱暴に掴んだ。
鬼頭に触れた手で、僕を肩を―――
「触らないでくれ!」
僕は叫んでいた。