TENDRE POISON ~優しい毒~
夕飯はまこが用意してくれてた。
彼はこう見えても結構料理上手だ。
テーブルの上にぶりの照り焼きと、サラダと味噌汁、肉じゃがが乗っていた。
一緒に食べていかないかと誘ったが、疲れたから帰って寝ると言って早々に帰っていった。
夕飯は鬼頭と二人。
テーブルにずらりと並んだ食事を囲みながら、鬼頭が口を開いた。
「ねえ先生。先生ってあの保健医と寝たいと思うの?」
僕は飲んでいたビールを危うく吹き出すところだった。
寝……!!
「な!なに言い出すんだ」
「純粋な疑問。答えてよ」
鬼頭は箸を持つ手を休めて真剣な表情をつくっている。
寝たいって……
「……そんなことまで考えなかったよ」
正直な気持ちだった。そんなこと考えたこともない。
「ふぅん。じゃぁ保健医と何がしたいの?」
「何って……別に特には……」
何か特別したいという気持ちは無かった。
僕はもう一口ビールに口をつける。
「じゃぁチューは?」
「ゲホッ!ゴホっ……チ、チュー?」
今度こそビールが喉の変なところに入っていって思い切りむせた。
「大丈夫?」鬼頭が眉を寄せて訝しげにこちらを見ている。
僕は手だけで答えて、何とか息を整えた。
僕が慌てたのには訳がある。
キス……
僕は寝ている鬼頭にキスをした―――
まさか……
起きてたわけじゃないよな……