TENDRE POISON ~優しい毒~

鬼頭はきょとんとして目をぱちぱちとしばたいた。


「だってまこは、最初僕を女と間違えたんだよ。まぁよく間違えられるけど。名前も女みたいだし」


僕は唇を尖らせた。


「あぁ、それ。今日聞いた。口説かなくて良かったって」


鬼頭が笑い声が混じった声で言った。


僕はちょっとむっとしてビールをぐいと飲んだ。


女っぽいってのは、僕のコンプレックスでもあるから。


「まこが落とした定期券を届けたのが僕だったんだ」


鬼頭はテーブルに頬杖をついてちょっと笑った。


「ありがちな展開だね。そこから恋が生まれたんだ」


「や。その時点ではまだ……


ていうか、鬼頭は?今までの恋は?」


「あたし?」鬼頭は目だけを上げて僕を見上げた。


猫が遊んで欲しいっていっているような媚びているようなでも悪意はない、可愛らしい仕草だった。


ドキリとした。




何で……


何で、心臓が音を立てるんだろう。








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