TENDRE POISON ~優しい毒~
僕は話題を変えるため肉じゃがに手を伸ばした。
じゃがいもを一口口に入れると、僕は目を開いた。
「この肉じゃがおいしいね」
「それ?それはあたしが作ったの」
へ?鬼頭が?
「保健医から聞いた。先生が肉じゃが食べたがってるって」
「おいしいって言ってくれてよかった」
鬼頭ははにかんだように笑った。
可愛い笑顔。鬼頭と1対1で喋るまで、鬼頭がこんな風に笑う子だなんて思わなかった。
いつも何か悟ったような、つまらなそうな顔をしていたから。
いつも考えてた。この子は何を考えてるんだろうなって。
でも今は……彼女の色んな一面を僕だけが知ってる。
口の端をあげて大人っぽい笑顔をすることとか、恥ずかしそうにちょっと笑うところとか。
冷たそうに見えて、心の中は意外に情熱的だとか。
料理が上手だとか。
僕だけが―――