TENDRE POISON ~優しい毒~
『……それって、あたしは振られたってこと?』
「……」僕は黙るしかなかった。
沈黙なんて卑怯だと思った。だけど、そうするしかできなかった。
『…だって水月くん付き合ってる人いないんでしょ?どうしてあたしはだめなの?』
僕は詰まった。
大人しそうなエマさんからこんな言葉が出るなんて。
僕はぐっとケータイを握った。
たっぷり時間をかけて含ませたあと、
「……好きな人がいる…」
と言った。
一瞬の沈黙。
エマさんが言葉を呑んだのが分かる。
僅かな沈黙のあと、しゃくりあげる声が聞こえた。
『好き……な人が…いるのに、あたしと寝たの?』
「ごめん」
僕はそう言うことしかできなかった。