TENDRE POISON ~優しい毒~
『…ック。納得…いかない……』
そうだよね。
いけないのは僕なんだ。
『電話じゃなくて…せめて会って直接顔見て……話したい』
エマさんは強い人だ。
僕ならとてもじゃないけど、振られた相手と会うことなんてごめんだ。
でも僕ができることは、一つしかない。
会って、直接顔を見て謝るんだ。
「じゃぁ、今週の土曜日とかどう?一度ちゃんと話そう」
『ヒック……うん』
「駅前の“As庵”ってカフェ分かる?そこで……そうだね、午後3時とか」
『……うん』
通話は切れた。
ふぅっと大きなため息が洩れる。
ケータイを畳んで、寝室から出ると鬼頭が大きな澄んだ黒い目でこちらをじっと見つめていた。