TENDRE POISON ~優しい毒~
◆午後2時のチューリップ◆
◇◇◇◇◇◇◇◇
神代がケータイを片手に寝室にこもってもう10分になる。
短いのか、長いのか。
ぼそぼそと話し声が聞こえる。
誰と話してるんだろ?
友達?家族?それとも保健医―――?
分かんないけど、心の中が何だかもやもやとくすぶってる。
一つ分かることは、あたしに聞かれたくない話をしてるってことだけ。
あたしが膝を動かすと、その上で眠っていたゆずの耳がぴくりと動いた。
「ごめんね、起こしちゃったね」
ゆずに謝りながら、あたしはゆずの頭をそっと撫でた。
ふわふわの毛の感触が気持ちいい。
ゆずは安心しきったようにまた目を閉じた。
犬っていいな。
無条件で安心を与えてくれる人間の傍にいることができる。
あたしにもいたけど、
今はいない。
乃亜姉……
早く目を覚ましてよ。