TENDRE POISON ~優しい毒~

その日の夜、神代はソファで眠った。


あたしは神代のベッドを使うことにした。



それがありがたかった。


一人になって色々考えたかったから。





そう、あたしがここに来た目的を忘れてはならない。


綿密に……いくつもいくつもトラップを張って、



いつかは神代を引きずり落とす。




寝室の窓から見える空には綺麗な形をした三日月がぽっかりと空に浮かんでいた。


綺麗な月……


月は輝く。真っ暗な道を照らす一筋の光のように。


でも月はそれ自体で輝くことはない。


悲しい星なのだ――






そんなことを考えながら眠ったからかな、当然ながら目覚めは最悪だった。


ケータイのアラームで無理やり起きると、あたしは這いずるようにリビングの扉を開けた。


リビングではすでに着替えを済ませた神代が新聞を片手にコーヒーを飲んでた。


「おはよ」


「鬼頭、おはよう。傷の具合はどうだ?」


「もうほとんど…今日は学校へ行っていい?」


「無理じゃなければいいよ」


神代はにっこり微笑んだ。


あたしはその笑顔から目を逸らした。





神代の笑顔に引きずり込まれる。


復讐心が揺らぐ。


だからだ―――








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