TENDRE POISON ~優しい毒~
―――――
―――
当然ながらあたしと神代は別々に学校へ行った。
一緒に登校なんてしたら、また新聞部に何を書かれるやら。
「鬼頭!」
校門の近くで梶の声が聞こえた。
遠くであたしを見つけたのだろう、梶は随分長い間走ってきたようだ。
息が切れてる。
「鬼頭、もう登校して大丈夫なのかよ」
「うん。まだ抜糸はしてないけど、もう傷も痛くないよ」
「そっか。良かったぁ」
梶は心の底から安心したように、強張った肩の力をふっと抜いた。
「心配かけてごめんね」
「や!鬼頭が謝ることなんてねーから」梶は両手をあげて、軽く制した。
梶はちょっと背をかがめるとあたしの顔をまじまじと見てきた。
「な……なに?」
「いや。やっぱ鬼頭の顔を一日でも見ねえと俺だめだわ」
は?
「何言ってんの。こんなところで」
あたしは顔を赤くして逸らした。
周りには同じように登校してくる生徒でいっぱいだし。誰かに聞かれた恥ずかしいよ。
「へへっ。でもマジで良かった~」
梶の嬉しそうな顔が眩しいぐらいだよ。
あたしはちょっと目を細めた。