TENDRE POISON ~優しい毒~

―――――

―――


当然ながらあたしと神代は別々に学校へ行った。


一緒に登校なんてしたら、また新聞部に何を書かれるやら。



「鬼頭!」


校門の近くで梶の声が聞こえた。


遠くであたしを見つけたのだろう、梶は随分長い間走ってきたようだ。


息が切れてる。


「鬼頭、もう登校して大丈夫なのかよ」


「うん。まだ抜糸はしてないけど、もう傷も痛くないよ」


「そっか。良かったぁ」


梶は心の底から安心したように、強張った肩の力をふっと抜いた。


「心配かけてごめんね」


「や!鬼頭が謝ることなんてねーから」梶は両手をあげて、軽く制した。


梶はちょっと背をかがめるとあたしの顔をまじまじと見てきた。


「な……なに?」


「いや。やっぱ鬼頭の顔を一日でも見ねえと俺だめだわ」




は?



「何言ってんの。こんなところで」


あたしは顔を赤くして逸らした。


周りには同じように登校してくる生徒でいっぱいだし。誰かに聞かれた恥ずかしいよ。



「へへっ。でもマジで良かった~」


梶の嬉しそうな顔が眩しいぐらいだよ。



あたしはちょっと目を細めた。



< 270 / 494 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop