TENDRE POISON ~優しい毒~
病院―――と言っても、あたしが運ばれた病院じゃなくて、乃亜姉の眠っている国立病院にあたしは来ていた。
乃亜姉……変わりないかな?
乃亜はたぶん……もう目覚めることがない。
分かりきってる筈なのに、あたしは心のどこかで奇跡が起こるのを期待している。
乃亜が目覚めたら、あたしのしようとしてること、止めてくれるかな?
あたしは……
乃亜姉に止めて欲しいのだろうか。
そんな考えを打ち消すように首をぶんぶん振っていると、いつの間にか乃亜姉の眠っている個室に着いた。
白い無機質な扉がわずかに開いていて、中から男の声がする。
「乃亜……目覚めてくれよ……」
明良兄の声だった。