TENDRE POISON ~優しい毒~
売店の前には長いすがたくさん並べてある。
売店でコーヒーを買うと、あたしたちはその椅子に並んで腰掛けた。
「どう?怪我の具合は?」
ちょっと疲れた表情を滲ませながら、明良兄がやんわりと聞いてきた。
「うん。今は大丈夫」
あたしも曖昧に笑みを返した。
「神代の家では?何もないか?」
何もされてないか?と聞きたいのだろう。言葉の裏に隠れた意味を感じ取った。
「今のところは」
あたしは缶コーヒーを両手で包むと、手のひらを温めるように強く握った。
「……そっか。ごめんな、力になれなくて。
お前にいつも危険な目に合わせて。兄貴失格だな」
明良兄は自嘲じみた笑みを漏らした。
「そんなことない。あたしにとって明良兄は最高のお兄ちゃんだよ」
あたしは微笑んだ。
明良兄もこの状況に参ってるって分かったから、元気づける為に。
「お兄ちゃん……か」
だけど明良兄は一言ぽつりと漏らしただけだった。