TENDRE POISON ~優しい毒~
赤い薔薇の花びらが再び宙に舞う。
その場に鬼頭と僕だけになった。周りの景色が消えて背景が黒一色に染まった。
鬼頭と僕。周りには赤い花びら。
鬼頭は僕を見ると僅かに目を伏せてまばたきをした。
目を開いた瞬間、その口に赤い薔薇の花びらと同じような鮮やかな笑みを湛えて鬼頭は目を細めた。
何か含みがあるような、大人の女をい思わせる妖艶な笑み。
視線が釘付けになる。
今まで見たどんな美しい光景より、美しいものより、それは輝いて見えた。
子供らしからぬ色っぽい笑顔。でもとても危険で、触れた怪我を負いそうな近寄りがたいもの。
赤い花びらが舞う。
ひらひら―――と。
僕の視界を赤一色に染める。
美しいと思う反面、僕は同時に恐ろしかった。
この色は悲しみを現しているのか。喜びを示しているのか。
それとも憎悪か―――