TENDRE POISON ~優しい毒~
そう楠の寂しい横顔が、赤い花びらに変わっていく。
「くすの……!!」
僕は必死に手を差し伸べた。
だけど、僕の手には軽やかな薔薇の花びらの感触しか残らない。
楠―――!!
僕は必死に叫んだ。
必死に手を伸ばした。
だけど後に残ったのは―――たくさんの花びらだけだった。
僕はその花びらを抱えて、がくりと膝をついた。
『神代先生!良かった、やっと連絡が繋がった』
夜中の電話。突如起こされた。相手は学校の同僚で美術の先生だった。
「どうかしたんですか?」
『楠が……楠 乃亜が!
自殺未遂で病院に―――運ばれました』
僕はその言葉を花びらを抱えながら、聞いた。
おかしいな……
これは夢なのに。
なのに、こんなにも涙が出る感触はリアルだ。