TENDRE POISON ~優しい毒~
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午後3時。約束の時間だ。
駅前に構える“As庵”というカフェは外にオープンテラスもあるちょっと洒落た店で、夜にはダイニングバーにもなる。
まこ、とたまにコーヒーを飲んだことがある店でもあった。
さすがにこの時期、外でコーヒーを飲む客はいなかった。
白いテーブルに赤い薔薇の造花が一輪挿しに飾ってあって僕はドキリとした。
まるで見咎められているようだった。
まこに、鬼頭に、楠に―――
店内でホットコーヒーを頼むと、僕はタバコを吹かせながらエマさんを待った。
3口目かで、
「いらっしゃいませ~」と店員の声が聞こえ僕は顔を上げた。
白いコートに身を包んだエマさんだった。
僕は慌ててタバコを消し軽く腰をあげると、エマさんは慌ててこちらに向かってきた。
「こんにちは…」エマさんがぺこりと頭を下げる。
その表情はどこか緊張に強張っていた。
「奥へどうぞ」僕はテーブルの奥を指し示した。
エマさんはコートを脱ぐと、奥へ向かった。
コートの下は、淡いピンク色のニットワンピだ。首元にリボンがあしらってあった。
鬼頭とは180度違う格好だからかな。
それともシラフだからだろうか。
こうやって見るとそんなに鬼頭とは似ていない。
オーダーを取りにきたウェイトレスにエマさんはミルクティーを注文した。
ミルクティーが来るまでしばらくの沈黙があった。
何か切り出そう、と考えていると、
「あたしホントは合コンも気乗りしなかったの」
とエマさんの方から口を開いた。