TENDRE POISON ~優しい毒~

「……僕も、まこに無理やり引っ張っていかれた」


僕は思わず苦笑いを漏らした。


「実はね、あたし長く付き合ってた彼氏に振られちゃったばかりだったの。水月くんを見てちょっとびっくりしちゃった。ちょっと元彼に似てたから」


エマさんがちょっと恥ずかしそうに笑った。


意外だった。正直エマさんが僕のどこを気に入ったのだろう、と疑問を抱いていたから。


でもそっか。それなら納得がいく。


僕だってエマさんが鬼頭に似ていたという理由で親近感を持ったのだから。




人間なんてそんなものだ。



誰かの影を追って誰かを求める。



エマさんのミルクティーが運ばれてきた。淹れたてなのだろう、カップから湯気があがっている。


エマさんの前にミルクティーを置いてウェイトレスは去っていった。



「でも似てるのは顔だけ。ううん顔も良く見たら全然似てなかった。元彼は水月くんみたいに優しくもなかったし、かっこよくもなかった」


エマさんは眉を寄せるとカップを両手で包んだ。


「だけど水月くんといたら不思議だね、失った恋を取り戻せる気がしたんだ」


僕はコーヒーカップに口をつけた。


「買いかぶりすぎだよ。僕は女性に対して誠実でもないし、ついでに言うと君が思うほどかっこいい男でもない」


本当にかっこいいって言うのは、まこみたいな男を言うものだ。





「好きな人がいるって言ったよね。付き合ってるの?」



エマさんが唐突に切り出した。







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