TENDRE POISON ~優しい毒~
「いや、違う」
僕はきっぱりと言った。
「そんな脈のない相手を思ってるのなら諦めた方がいいんじゃない?自分の幸せのために」
エマさんは俯きながら、静かに言った。
「脈のない……か」
僕はどこか遠くを見るように脇にある薔薇の造花を見つめた。
まこから薔薇をもらったあの日から、僕の歩む道がいばらの道だと暗示していたのか。
あの薔薇は3日ほど美しく咲き誇って―――
そして儚く散っていった。
僕の思いも、そんな風に散ってしまったら―――どんなに楽だったろう。
僕はエマさんに視線を戻すと、彼女はきちんと前を向いていた。
僕はその視線に応えるように、
「僕が好きな人は結婚してる人でもない。亡くなった人でもない。
僕の親友で―――
男だから
僕が好きな人は林 誠人だから」
とエマさんの目をまん前から見据えてはっきりと言った。