TENDRE POISON ~優しい毒~
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金曜日
今日一日あたしは不機嫌モード。何故か胸の中で苛々がつかえてるんだ。
帰りのホームルームが終わる鐘の音が聞こえて、生徒たちが一斉に帰り支度にかかる。
「鬼頭」
梶はいつも帰り際声をかけてくる。
今日は何だろう。
少しめんどくさそうにあたしは顔をあげた。
「鬼頭、明日暇?」
何だろう、急に。
「何で?」
「や。あのさっ、明日お前んち行っていいかなって?へ、へんな意味ないよ。期末試験も近いし、勉強一緒にしようかなって思って」
期末試験かぁ。もうそんな時期なんだ。
そう言えば数学の追試も来週だ。
「一緒に勉強するっつーっても俺は頭わりぃから鬼頭に教えてもらおうって魂胆だけど」
梶は恥ずかしそうに頭をかいた。
「って、やっぱ迷惑だよなぁ。そんなこと急に言われても」
「いいよ。勉強、一緒にしようよ。だけどあたしんちはちょっと無理」
あたしは何故かそう答えていた。
いつもなら断るはずなのに。
今日は何故だかむしゃくしゃしてたから、感情の捌け口に梶の誘いに乗った。
そう、苛立ってたのだ。あたしは―――