TENDRE POISON ~優しい毒~
次の日。
あたしが私服に着替えてリビングに行くと、神代も私服姿でテレビを見ていた。
ジーンズに、清潔そうな白いシャツ。襟の部分に花柄があしらってあって洒落たシャツだった。
黒いジャケットを手にしている。
一個ボタンをあけた、首元からきれいな鎖骨がのぞていて、シルバーチェーンがちらりと見えた。
初めて見る私服姿に、ドキリ…とした。
学校はスーツだし、寝巻き代わりに使ってるのは黒のスウェットだ。
「出かけるの?」
神代はあたしを見てちょっと微笑んだ。
柔らかい笑顔。
あたし、あんたのそうゆう笑顔嫌いじゃないよ。
そう思って、はっとなった。
「うん。そっちも?」
慌てて答える。あたしは耳にピアスをつけながら気持ちの動揺を隠した。
「どこまで行くの?僕も出かけるから送っていくよ」
神代、出かけるんだ……
どこへ?誰と?
そんな格好で誰と会うの?
あんな笑顔誰に見せるの?
もしかしてケータイに入ってた“エマさん”?
ヤだよ
あ。また不機嫌のスイッチが入った。
あたしは苛立っていることを隠すためゆっくりと首を振った。