TENDRE POISON ~優しい毒~

今日は結局、梶の家にお邪魔することになった。


もちろん二人きりじゃないよ。


梶のお母さんとお兄さんが家にいるって言ってた。


あたしは人数分のプリンを買って、駅からバスで3駅のところにある梶の家を訪ねた。


梶の家は綺麗な一軒家だった。


インターホーンを押すと、中からドタッバタッと派手な音が聞こえて、梶が息を切らして扉を開けてくれた。


「鬼頭。おは、おはよ」


あたしはちょっと笑った。


「何でどもってるの?」


「いや、別に。どもってねーよ」恥ずかしそうに目を逸らす。


その背後で、


「優輝~お友達見えたの?」と柔らかい声がして、女の人が顔を出した。


ピンクのエプロンをした綺麗な女の人だった。バニラの甘い香りがふんわりと香る。


「こんにちは。梶…優輝くんの友達で鬼頭と申します。えっと……」あたしは詰まった。


「優輝くんのお姉さん?」


「や。違う、違う!」


「ま!お姉さんですって。嬉しいわ~はじめまして。優輝の母です。さ、あがってください」


梶の―――お母さんと名乗った人はからからと笑うと、上機嫌であたしを家に招きいれた。


ちょっとびっくり。だって思ってたよりずっと若くて綺麗なんだもん。


「お邪魔します」ぺこりと頭を下げてあたしは玄関にあがった。


しまった……


あたし、今日ジーンズをブーツインしてきちゃった。


脱いでるのに戸惑っていると、


「はよ~、優輝の友達くるのって今日だっけ?」


とかすれた声が階段の段上で聞こえた。








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