TENDRE POISON ~優しい毒~

「It was after eight o'clock andmost of the shops were closed.”8時が過ぎた。そしてほとんどの店が閉められた”という意味だけど、“ほとんど”という意味を表すにはいくつかあり、これをきちんと整理しなきゃいけないの」


あたしは英語の教科書の一文をシャープペンの先でなぞった。


「ふんふん」と梶は大人しくあたしの講義を聞いてる。


「まず注意すべきなのは「almost」が副詞であるということ。almostの次には形容詞か副詞がこなくてはいけないからこの場合4のmost of theが来るってわけ」


「鬼頭の説明は分かりやすいな」


梶が白い歯を見せてにこっと笑った。


「どうも。梶も覚えが早いから教えがいがあるよ」


ちょっと休憩って意味であたしはペンを置いた。




折りたたみ式のテーブルの上に、教科書やらノートが散らばっている。


あたしは改めて梶の部屋をきょろきょろと眺めた。


梶の部屋は6畳ぐらいかな。男の子らしい、黒や青のインテリアが目立った。


神代の部屋では見ることがなかったサッカーボールや、ゲームのソフトが転がっていた。




明良兄の部屋に感じが似てる。


あたしは床に転がったクッションを手繰り寄せ、抱きかかえると後ろのあるベッドにもたれかかった。


梶もため息を吐きながら同じようにベッドに背をもたれさせる。




「雅……」



唐突に名前を呼ばれて、床に置いたあたしの手に梶の手が重なった。






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