TENDRE POISON ~優しい毒~
でも……
「ね、だから付き合って?」
お兄さんがあたしの顔を覗き込んだ。軽く片目をつぶってウィンクしてる。
「絶対楽しい思いさせる自信あるし」
あたしはお兄さんを思わず睨み上げた。
「寂しい人。あなたは知らない。
大切な人を思って眠れないことがあることも。
大切な人のことを思って、泣きたいほど辛いことがあることも。
時にはそれが―――死をもたらすことを」
そう、それが恋。
お兄さんはちょっとびっくりしたように目をぱちぱちさせた。
「驚いたな。ただの女子高生だと思ってたのに。君は何者?」
それ、以前保健医にも言われたっけ。
「ただの女子高生ですよ」
じゃ、と短く言ってあたしはお兄さんを置き去りにしてその場を足早に去った。