TENDRE POISON ~優しい毒~
僕は鬼頭のもとに屈みこんだ。
「鬼頭…こんなとこで寝てちゃ風邪引くよ」
控えめに声をかけたけど、目を開けたのは鬼頭ではなく、ゆずだった。
「鬼頭」
思い切って、華奢な肩に触れて軽く揺さぶる。
「……ん~」小さく身じろぎをして鬼頭が目を開ける。
「先生?おかえり~」
寝起きだからだろうか、いつもより声や表情が甘い。
ドキリとする、というよりも何故かほっと安心した。
「今何時ぃ?」むくっと起き上がって両手で口元を覆った。
どうやら欠伸をしているようだ。目尻に涙が溜まっている。
「4時ちょっと過ぎかな」僕は腕時計を見た。
「もうそんな時間?夕飯の支度しなきゃ」
「簡単に鍋でもしよう。野菜いっぱい入れて」
僕が目を伏せて口元だけでちょっと笑うと、鬼頭の手が僕の前髪に伸びてきた。
触れるか、触れないか際どいところだ。
僕は顔をあげた。
鬼頭は瞬きもせずにじっとこちらをまっすぐに見てくる。
「先生。何かあった?」