TENDRE POISON ~優しい毒~
「べ……別に。何も……なんで?」
「ん。ちょっとそんな気がしただけ。疲れてそうに見えたからかな」
鬼頭は鋭い。それにちょっとドキリとする。
「まぁ、ちょっと疲れてはいるけど、何もないよ」
僕は何事もなかったかのように平然と答えた。
「そ。それならいいけど」
「うん」短く答えて僕は立ち上がろうとした。
床についた僕の手に鬼頭の手が重なった。
ひんやりと冷たい感触だ。
「先生……、あたしの手を握って?」
鬼頭が僅かに目を伏せて、小さな声で言った。