TENDRE POISON ~優しい毒~

「べ……別に。何も……なんで?」


「ん。ちょっとそんな気がしただけ。疲れてそうに見えたからかな」


鬼頭は鋭い。それにちょっとドキリとする。


「まぁ、ちょっと疲れてはいるけど、何もないよ」


僕は何事もなかったかのように平然と答えた。


「そ。それならいいけど」


「うん」短く答えて僕は立ち上がろうとした。


床についた僕の手に鬼頭の手が重なった。


ひんやりと冷たい感触だ。




「先生……、あたしの手を握って?」



鬼頭が僅かに目を伏せて、小さな声で言った。









< 309 / 494 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop