TENDRE POISON ~優しい毒~
血が……繋がってない?
「は?……何言ってんのよ……」
「冗談じゃねーよ」
明良兄は顔を伏せて呟いた。
「そのこと乃亜姉は……?」
「知らない。知ってるのは俺と俺の両親だけだ。
俺たちの両親が結婚したとき、俺の母親と、乃亜の父親にはそれぞれ連れ子がいたんだ。それが俺たちだった。乃亜はまだ赤ん坊だったから、そんなこと覚えてないだけだったんだ。
黙ってて悪かったと思ってる。
でも俺は乃亜のことをホントの妹だと思ってる。今でも変わらないよ」
「何で。そんな重要なことあたしに言うの……?」
「お前だからだ」
明良兄は顔をあげた。
口は真一文字に結ばれ、目が僅かに釣りあがっていた。
真剣な顔つきだ。
「ごめん」
あたしは席を立った。
まだ食事の最中だったけど、箸を置いて。
「何で謝るんだ?」
明良兄が向かい側から問いかけてくる。
あたしは無理やり笑った。
「ちょっと気持ちを整理させたい。一人になりたいの」
あたしの答えに明良兄は寂しそうにちょっと笑っただけだった。