TENDRE POISON ~優しい毒~
「どうしたんだよ?」
僕は思わず苦笑いをした。
「いいから……。握って?」
何かあったのは鬼頭の方なんじゃないか。
表情にどことなく覇気がない。疲れている、というよりも何か怖いものから逃げ出したいというような顔だ。
僕はそっと鬼頭の手を握り返した。
細い指。力を入れたら折れてしまいそうな。
「ありがと。先生の手ってすっごく安心する。あったかい」
鬼頭は目を伏せたままほんのちょっと笑った。
その表情が心から安心した、と語っていた。
僕も同じことを考えてた。
「僕も鬼頭といると安心する」
触れた指先から、鬼頭のぬくもりを感じる。
そこから一くくりでは現せない愛情が伝わってきた気がした。