TENDRE POISON ~優しい毒~

「ビデオ見る?」


僕は話題を変えてDVDデッキのリモコンを手にした。


「うん」鬼頭も僕の行動に特別不信感を抱いたり、気分を害したりしてないようだ。


再生機能を押して、DVDを再生した。






―――


暗くした部屋で、テレビの明かりだけが青白く浮かんでる。


画面に映るのは、飛び散る血や鈍い光を放つナイフの先だ。


連続殺人鬼のホラー映画。


鬼頭は怖いのか、画面から目を逸らして僕の隣でさっきからずっと僕のシャツをずっと握って身を寄せてる。


怖いのが苦手なのかな。意外だ。平気だと思ってたのに。


恐いなら他ごとをしてれいればいいのに。


何故か鬼頭は一緒に見たがった。


こんなんなら恋愛映画を借りてくれば良かったかな。なんて考えてちらりと鬼頭を見た。


鬼頭は顔を青くして眉を寄せている。


スウェットのしっかりあがりきっていないジッパーから鬼頭の白い胸元がちらりと見えた。


「わっ」とか「あぁ」とか小さく声を漏らす度に胸が当たってるんですけど。


僕はそれから目を逸らした。




何でかな?僕が好きなのはまこなのに。


エマさんに酷いことをして彼女を傷つけたばかりなのに。


不謹慎だな。僕の素直な男の気持ちが体の外に出ようとしている。


エマさんのときのように、何となく流されてとか、自暴自棄になってたから、とかじゃない。


アルコールも入ってるわけじゃないし。




ただ、どうしようもなく鬼頭の肌に触れたいと思った。








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