TENDRE POISON ~優しい毒~
「って言えば満足です?」
あたしがちょっと声を低める。
女は心配と、不安と、怒りを込めた複雑な表情を浮かべた。
「あなた、水月くんの何なの!」
「そっちこそ、何なんですか?」
「あたしは……」と女が言いかけたところで、
「鬼頭?誰だった?」と神代が廊下の奥でひょっこり顔を覗かせた。
それと同時に表情を凍らせた。まさに固まったという表現がぴったりだ。
「エマさん……」
あたしは女を見た。
“エマさん”―――
神代の着信に残ってた名前だ。