TENDRE POISON ~優しい毒~
「水月くんどういうこと?この子と一緒に住んでるの?」
エマさんが食いつかんばかりに勢い込んだ。
「いや、ちょっと事情があって預かってるだけなんだ」
神代がこちらに向かってくる。その足取りは重そうだった。
慎重に、慎重に……でないと踏み外すよ。踏み外したら、最後君はまっさかさまだ。
神代が歩いているの一本の頼りないロープに見えて、また誰かにそう言われている様だった。
「預かってるって……嘘!」
「嘘じゃないよ。落ち着いて」
「あたしを振ったのも、この子がいるから?誠人くんを好きだって言ったのも嘘なんでしょ!?」
振った?
神代がエマさんを?
それに保健医を好きだってこと、エマさんに言ったんだ。
「ホントだよ。ね、だから落ち着いて」
神代は素行が悪い生徒を諭すような優しい物言いで手を上下させてる。
「……たのに……」
あまりにも小さな声だったから、最初は何を言ってるのか聞き取れなかった。
「え?」
あたしが問い返すと、エマさんはまるで諸悪の根源があたしにあるかのようにキっと目を吊り上げて、
「あたしと寝たくせに!」
と一言叫んだ。