TENDRE POISON ~優しい毒~



◆◆◆◆◆◆◆◆



「悪いな、家まで送ってもらって」


「いいよ、近いし」


僕は車を運転しながら言った。


実際、まこが一人で暮らすマンションは学校からそう離れていない。


電車で2駅ほど、というところだ。


もっと遠いところにあれば良かったのに……


そうすれば、それまで二人きりでいれたのに。





雨足は一向に止まない。それどころか強まる一方だ。


ワイパーを動かす速度を早めた。






出し抜けにまこが口を開いた。



「水月、香水でもつけてるのか?」


「香水?ううん。つけてないけど」


「芳香剤かな。いい香りがする」







香り……



あ!鬼頭の香りだ。







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