TENDRE POISON ~優しい毒~
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「悪いな、家まで送ってもらって」
「いいよ、近いし」
僕は車を運転しながら言った。
実際、まこが一人で暮らすマンションは学校からそう離れていない。
電車で2駅ほど、というところだ。
もっと遠いところにあれば良かったのに……
そうすれば、それまで二人きりでいれたのに。
雨足は一向に止まない。それどころか強まる一方だ。
ワイパーを動かす速度を早めた。
出し抜けにまこが口を開いた。
「水月、香水でもつけてるのか?」
「香水?ううん。つけてないけど」
「芳香剤かな。いい香りがする」
香り……
あ!鬼頭の香りだ。