TENDRE POISON ~優しい毒~
◆午後7時の懺悔◆
◆◆◆◆◆◆◆◆
「寝たって、先生最低だよ!」
そう言われて罵られたほうがまだ良かった。
鬼頭は初めて僕の前で涙を見せた。
声もなく無表情に。ただ静かに涙だけが、零れ落ちていた。
正直、驚いた。
鬼頭は何も言わずに僕に背を向けた。
そこでようやくはっとなった。
「鬼頭!鬼頭待ちなさい!」
必死に声を投げかけたが、先を急ぐ彼女の背中にその言葉は届かなかった。
「追いかけないで!」
エマさんが僕の袖にすがり付いてくる。
乱暴に振り払うこともできずに、僕は視界の端から鬼頭が消えていくのをただ見守るだけしかできなかった。
そうこうしてる内に僕の部屋の隣の住人が、何事かと顔を覗かせた。
僕は慌ててエマさんを部屋の中に引き込むとあわただしく扉を閉めた。