TENDRE POISON ~優しい毒~
エマさんは去っていった。
「残酷なひと」
突き刺さるような言葉だった。
暖房をつけていない部屋はひんやりと寒かった。
部屋の明かりもつけてない。
何もする気になれなかった。ただぼんやりと空を眺めているだけ。
ただ一つ気がかりなことは、
鬼頭……どうしたかな?
軽蔑したよね。
好きな人がいるのに、流されて簡単に違う女の人と寝ちゃって。
~♪
出し抜けにケータイが鳴った。静まり返った部屋にその音がやけに響く。
着信:まこ
僕は通話ボタンを押した。
『鬼頭 雅は預かった。返してほしくば月曜日の昼飯を奢れ』
「まこ、今は冗談に付き合ってる気分じゃないんだ」
そっか……
鬼頭は、まこのところへ行ったか。
その辺をふらふらしてるより、まこの家の方が安全だ。