TENDRE POISON ~優しい毒~
まこは20分も経たない内に来た。
「飲んでなくて良かったぜ。ったく、お前らには世話やかされるよ。で?何があった?」
到着するなりまこはせっかちに聞いた。
僕は渋るまこをリビングに招きいれ、コーヒーを出した。
まこはどっかりとソファに腰を下ろし、僕はその隣に遠慮がちに座った。
なにから切り出そう、と考えあぐねいていると、
「お前、鬼頭を振ったの?ありゃ手ひどい失恋しましたって顔だったぜ」
「失恋……、どうなんだろ。鬼頭は僕のことどう思ってるんだろ?」
僕は膝の上で組んだ手の指をちょっと動かせた。
まこは目だけを動かして僕をちらりと見ただけだった。
「さあな。でも嫌ってるってわけじゃなさそうだけど。お前って昔からその気のない女にもてるよな」
「その気のない……か。僕は酷い男だ。残酷なひととも言われたな」
「誰に?」
まこがちょっと興味深そうに前かがみになった。
「エマさんに」
僕もまこと同じように上体を前に倒して、同じ目線で彼を見て微笑んだ。