TENDRE POISON ~優しい毒~
でもこのことをまこに言う気になれなかった。
「車の芳香剤だよ。きっと……」
僕は曖昧にごまかした。
やがて車はまこのマンションに到着した。
短い……ドライブだった。
マンションの前につけると、入り口の屋根の下に一人女の人が立っているのが見えた。
上品そうなトレンチコートを着ている。
まこは車の窓を開けると、
「千夏」と呼んだ。
隣で僕は目を開いた。
チナツ―――
僕の知らない名前。
知らない人。
でもまこは親しげだ。名前を呼ぶ声に愛を感じた。