TENDRE POISON ~優しい毒~

明良兄の部屋をノックしたけど、中から返事がない。


おばちゃんの言ったとおりまだ寝てるのかもしれない。


あたしは返事を待たずに、そっと明良兄の部屋を開けた。


案の定明良兄はの布団にくるまって寝息を立てていた。


「明良兄……お兄。」


ゆさゆさと軽く揺さぶってみたけど、


「ん~?」と気のない返事が返ってくるだけ。





あたしは明良兄を見下ろした。


妹、としてじゃない。ただの女としての視線で彼を見た。


口元まで布団を引き上げて、整った鼻梁から上があらわになってる。


長い睫も、きりりと上がった眉も整っていて綺麗だった。


妹の贔屓目じゃなくても明良兄はかっこよく見える。



だけど、お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ。




じっと見つめていても明良兄は身動き一つしない。


その寝顔がひどく無防備だ。


仕方なしにあたしはベッドにあがると、布団をめくって明良兄の布団にもぐりこんだ。


昔はよく乃亜姉と三人仲良く一緒に寝たよね。


明良兄はこちらに背を向けてる。


その広い背中にぴとっと寄り添って、


「明良兄。起きてよ……」と呟いた。




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