TENDRE POISON ~優しい毒~
明良兄の顔があたしの首に降りてきた。
ふわり、と柔らかい髪をあごの先に感じる。
明良兄の唇があたしの首筋にそっと触れる。
優しく……優しく、まるで壊れ物を扱うような。そんな感触だった。
前に一度保健医にもこんなことされたことがあったけど、保健医にこんな愛情を感じられなかった。
愛情……
そう、確かに明良兄の唇には愛情が感じられる。
それは男女の愛ではなく、家族としての愛だ。
「お前なぁ、もっと抵抗しろよ」
明良兄が呆れたように顔をあげた。
「だって明良兄だよ。危険を感じないんだもん」
「俺だって男だっつーの。お前みたいな可愛い女がいればそりゃヤりたくなるわ」
「嘘ばっか」
あたしはちょっと微笑んだ。
明良兄は面白くなさそうに唇を尖らせた。
「嘘じゃねぇよ。男なんて所詮は俗物だ。頭ん中ではそのことでいっぱいだ」
「説得力ないなぁ」
あたしは笑いながら起き上がった。
「だって俺、好きな女とセックスしたことねぇもん」