TENDRE POISON ~優しい毒~
明良兄はベッドから立ち上がると、机の引き出しからタバコの箱を取り出した。
神代と吸ってる銘柄が同じだった。
「ここで吸うの?下におばちゃんいるよ?」
「ばれやしねーよ」
そう言って一本取り出し火を点ける。
ため息とともに煙を吐き出しながら、明良兄はあたしの隣に腰を下ろした。
「俺は今まで、好きでもない女と付き合ってキスして、セックスしてきた」
「できるもんなの?」
あたしは目を細めて明良兄の横顔を見た。
明良兄はぼんやりと定まらない視線を壁に向けてる。
「割り切りゃ案外簡単だった。ずっと好きな女には、ホントの気持ちを言えやしねぇから。その代わりで、気持ちや体を埋めるんだ」
神代もそうだったのかな?
保健医に気持ちを伝えられないから、その隙間を埋めるため……
「明良兄?好きなひといるの?」
明良兄は組んだ脚の上に頬杖をついてこちらを見た。