TENDRE POISON ~優しい毒~
放課後になっても僕は職員室でテストを作ることで手が一杯だった。
「あ、しまった。テキスト、車の中だ」
僕は2年生のテスト問題に使うテキストを車の中に置き忘れたことに気づいた。
「仕方ない、取りに行くか」
職員用の駐車場に見慣れないスポーツカーが停まっていた。
日産のGT-Rだ。
う~ん。かっこいいなぁ。
あんな車が似合うような男になりたいな、なんてぼんやり考えてると、
車の向こう側に鬼頭の姿を発見した。
「だからぁ、こんなところに来られても困ります」
何やら困った顔で鬼頭が立っていた。
「そんなこと言わないでよ。優輝と付き合ってないんでしょ?それならいいじゃん」
と聞きなれない男の喋り声が聞こえた。
ドキリ……とした。
鬼頭、誰と喋ってるんだ?
その男は誰?
僕はドアを開ける手を止めて、じっと鬼頭の方を見つめていた。
すると、ばっちり鬼頭と目が合ってしまった。
「先生……」
「鬼頭、誰と話してるんだ?」
僕は鬼頭の下へゆっくりと歩いていった。
「誰って―――彼氏」