TENDRE POISON ~優しい毒~
ズキリとした。
胸の奥に鉛玉を打ち込まれたみたいだ。
「んなわけないでしょ。梶のお兄さんだよ」
鬼頭は相変わらずのテンションでこちらをおちょくっているかのように答えた。
「誰?先生?」
車の中から男が顔を出す。
なるほど、梶田のお兄さんか。どことなく顔が似てる。
僕はホッとした。
ん?待ってよ。何であからさまにホッとするんだ?
「ここは部外者意外立ち入り禁止なんです。さっさとどっか行って下さい」
鬼頭は、ぴしゃりと遮断するかのように跳ね除けた。
僕に言われた言葉じゃないけど、キツイなぁ。
でも梶田のお兄さんは全然へこたれてない様子。
「相変わらず冷たいねぇ。いいじゃん、ちょっとデートぐらい付き合ってよ」
「いやですってば……」
「鬼頭」
僕は鬼頭の言葉を遮って彼女を呼んだ。
鬼頭が顔をあげる。