TENDRE POISON ~優しい毒~
ドキン!
あたしの心臓が大きく音を立てて壊れそうだった。
だめ!ここで動揺を現したらこっちの負け。
「何のこと言ってるのか、さっぱりわかりません」
「さすが、全く動じないな。
お前のこと色々調べさせてもらった。水月は甘いところがあるけど、俺ぁ一度疑ったらどうしても気になるもんでね」
「調べたって何を?」
あたしが目だけを動かして保健医を見た。
保健医はため息とともに煙を吐き出した。
「お前んちのこと。
お前、俺らに家を見せるのを頑なに拒んだよな。いや、頑なにって程でもないか。
もっともらしい口実つけて、こっちが詮索してこない程度、に」
「だから何が言いたいんですか?」
「お前んちの隣に楠家がある」
「だから?ただの偶然でしょ?
あたし近所づきあいなんてしてないから、お隣さんとはあんまり親しくないんです」
「そうかな?だったら楠兄妹と同じ学校へ来た?お前だったらもっと高いとこ狙えただろう?」
「それは、二人の制服姿見て可愛いなって思ったからです。それに近いし」
あたしの言い訳を保健医は涼しい顔で流した。
ふっと笑うと、
「楠 明良もグルかぁ」とのんびり言った。