TENDRE POISON ~優しい毒~
慌てて口を噤んだけど、もう遅い。
やられた!
またも、こいつの誘導尋問にはまった。
「ま、夜はこれからだ。ゆっくり話そうぜ~」
保健医はタバコを灰皿に押し付けると、席を立った。
「ちょっとトイレ」と言って、廊下に消えていく。
残されたあたしは冷や汗を浮かべながら、頭を抱えていた。
どうする?
どうすればいい?
もう少しで計画が完成するってのに!
すぐ近くに置いた鞄を手繰り寄せる。何かないか。
何か―――
鞄の内ポケットを探ると、銀色の小さなパッケージが出てきた。
“ハルシオン”
いつか、神代の部屋からくすねてきた薬だ。
睡眠薬……
あたしはちょっとの間その睡眠薬を眺めた。
使えるかも……
あたしはパッケージを破って、見るからに健康に悪そうな青紫色をした錠剤をビールの缶に放り込んだ。