TENDRE POISON ~優しい毒~
「お待たせ」
保健医はすぐに戻ってきた。
何の疑いもなく、ビールをぐいと一飲みする。
薬の効果がどれぐらいで作用するのか分からない。
作用するまで、何とかはぐらかさないと。
「で、先生は何が言いたいんですか?
神代先生に近づくなって?」
「早い話そうだな。水月に復讐なんてやめとけ」
あたしは鼻で笑った。
「何であたしが神代先生に復讐しなきゃならないんですか。
まるで乃亜の自殺が神代先生のせいって言ってるみたいじゃないですか?
それとも何?神代先生は復讐されるようなこと何かやったんですか?」
保健医がメガネの奥の視線を険しくしてあたしを睨んだ。
「怖かないわよ。そんな睨み。
あたし、ホントのこと知りたいだけだもん」
「ホントのこと……?」
保健医はまたビールに口をつけた。
目をしばたいて、何度か強く瞑る。
「どうしたんですか?」
「いや……」
短く言ってメガネを外す。眉間を指でつまんで再びまばたきした。
「眠そうですね」
「いや……大丈夫……」
ちょっと疲れてるのかも……そう言いながら保健医の体が傾いて、とうとうテーブルに顔を伏せた。