TENDRE POISON ~優しい毒~
「お前?何したんだ?」
保健医があたしを睨みあげる。
前髪の分け目から見えた額に血管が浮き出ていて、その皮膚の下で血が暴れまわってるみたいだ。
「何って、見たままのこと。証拠だってほら」
あたしはケータイに納めた写真を見せた。
保健医は上半身裸で、あたしはキャミ姿。二人が寄り添ってる写真。
「これ見たらみんなどう思うかなぁ。あんたは学校にいられなくなるよね」
「バカかお前、俺は学校なんてどうでもいいっつうの。それにこんな写真一枚で誰が信じるってんだ」
保健医は頭を押さえた。
言葉とは裏腹に随分焦ってるようだ。
「学校はね。
でも千夏さんや、神代が見たらどう思うかなぁ。
あんた恋人も親友も一気に失うよ。
事実なんてどうでもいいんだよ。この画像があれば少なくともあんたとあたしが近くにいるって言う証拠になる」
保健医は素早い動作で、あたしの手首を掴んだ。
強い力。これでも手加減してるんだろうな。
本気で力入れられたらあたしの腕なんて簡単に折ることができるんだろうな。
あたしの手からケータイが抜けて保健医の脚の間に落ちた。
「残念。
もうデータは転送済みだよ。あたしに何かあったら公表する手筈になってるの」
「楠 明良か」
保健医は低く唸るように言って、忌々しそうに舌打ちした。