TENDRE POISON ~優しい毒~
「俺を脅してどうするんだ?」
「脅しなんて大それたことないよ。
ただ神代先生に乃亜とあたしの繋がりを黙っててほしいの。
ね、先生。
あたしの愛しい共犯者になってちょうだい。
沈黙を守る。ただそれだけだよ」
あたしは保健医の耳元でそっと囁いた。
「計画が終わったら画像は全て処分する。約束よ」
保健医は乱暴にあたしを引き剥がすと、まるで蛇が敵を威嚇するように睨んできた。
「断るって言ったら?その画像が流れたらお前もただじゃ済まないだろ?」
「バカね。それであたしを負かしたつもり?
あたしはね、もう何も失うものなんてないの。
何も怖くない!最初から捨て身の覚悟だもん。今更そんなことでビビるわけない!」
ほとんど叫ぶように言い切った。
ずっと言いたくて言えなかった言葉。
ずっと誰かに分かってほしかった本音。それがようやくあたしの心の中から外へと飛び出したよ。
保健医は目をぱちぱちさせて、ちょっと哀しそうに眉を寄せた。
何で……
何でそんな顔するんだよ。
まるで「お前水月のこと好きなんじゃないのか?本当にそれでいいのか?」と語っているようだ。
そんな同情みたいな目で、あたしを見ないでよ!
「安心してよ。
別にあたし神代先生を殺したいとか思ってないから。
もちろんそんなことするわけないし」
あたしは一言言い置いて、制服のブラウスに腕を通した。
好きだよ。
大好き。
こんなにも愛してるのに……あたしと神代は相容れない。
いつかその想いが交差する日は、きっと……
来ない。