TENDRE POISON ~優しい毒~
ガチャ
扉を開けると、白い息を吐きながら鬼頭が寒そうに首をすくめていた。
あの芳しいタンドゥルプアゾンも帰ってきた。
「鬼頭……」
黒いコートに、手にはボストンバッグ。
「ただいま」
恥ずかしそうに、ちょっと俯いて呟く。
「……おかえり。もう、怒ってないの?」
「最初から怒ってないよ。でも先生がしたことは許せることじゃないと思う」
「うん。そうだよね……」
「だから条件飲んでくれたら、エマさんのことはきれいに水に流す」
鬼頭が顔を上げた。
寒さで、鼻の頭が赤くなっている。
それが可愛く感じれた。
「条件?」
「うん。寝るときはベッドで一緒に寝るってこと。先生ソファだといつか体壊すよ」
「え……でも、それは……」
さすがにまずいでしょ。
年頃の男女が。それも教師と、生徒だ。
そんなことを考えてると、
「嫌ならいいよ。あたしそれをネタにネチネチ先生を苛めるから」
何だか随分子供らしいことを言う。
でも……
僕は待っていた。
ずっと。鬼頭の帰りを。
「分かったよ。一緒に寝よう」