TENDRE POISON ~優しい毒~
シャワーを浴び終えた鬼頭は、テーブルの上で何やら熱心に見ていた。
膝の上でゆずが丸くなっている。
鬼頭が戻ってきて、ゆずはすっかり元気になった。
「勉強?明日の試験に備えて?」
僕が覗き込むと、鬼頭はテーブルに女の子向けの雑誌を開いていた。
「何だ、勉強してるかと思ったのに」
「勉強はちゃんとしたよ。1時間ぐらい。明日の物理と、英語はばっちり」
頬杖を付いたまま目だけを僕を見上げる。
1時間……。僕が学生の頃は必死に何時間も勉強したのに。
頭の造りが違うんだな、きっと。
それが悲しい。
「何一生懸命見てるの?」
「ん。手編みのマフラー。男の人ってもらって嬉しいの?」
「え?鬼頭、誰かにあげるの?」
ちょっとズキリと心臓が響く。
あれ?何でかな?
「んなわけないじゃん。あたし編み物なんてやったことないし」
「そっか~」
ちょっとほっとする僕。
あれれ?何でそう思うんだ?
「ね、先生は何色が好き?」
鬼頭が笑顔で聞いてきた。
心臓がキュっと音を立てて縮んだ気がした。
今日の僕はおかしい。