TENDRE POISON ~優しい毒~
「僕は、白色かなぁ」
「白、ねぇ。先生らしい。ピュアな白」
「ピュア?」
聞いてて恥ずかしくなった。
「鬼頭は?」
「あたし?あたしは赤。ハートの色」
何だか鬼頭にしてはロマンチックな発言だ。でも、
「ハートの色?ハートはピンクじゃない?」
僕の意見に鬼頭はちょっと目を伏せて、微笑んだ。
鬼頭のこの笑い方が好き。
顔全体で嬉しさを表現する笑顔も好きだけど、控えめに笑うこの笑顔はどこか色っぽいんだ。
「赤だよ。心臓の色」
し……心臓ですか?やっぱロマンチックじゃなかった。
「ね、先生。ハートは何で赤い色をしてると思う?」
「心臓の色だからでしょ?」
僕はちょっと呆れたように言った。
「違うよ。ハートはねぇ、傷ついていっぱい血を流した色なんだよ。
痛くて、痛くて。傷ついても誰かを愛せずにはいられない。
恋をすることはいつも命がけなの。
だから、ハートは赤色なんだよ」
ギュッと心臓が一層縮んだ。
傷ついて……
傷ついて、血を流す。
誰もが、そんな想いを抱えてる。
誰もが―――