TENDRE POISON ~優しい毒~
「失恋には新しい恋をするのが一番なんだよ。あたしじゃだめ?」
「え?」
何のことを言っているのか分からなかった。僕は横を向いて鬼頭を見た。
「あたしは先生の彼女になれない?」
握った手を口元に置いている。片方の手は布団を掴んで引き上げているその姿がとても可愛く思えた。
僕たちは互いに傷つき、疲れきっていたんだ。
足りないところを埋めようと、いつも何かを必死に探してた。
今は、手を伸ばせば、その疲れた気持ちを…寂しさを埋め合える人がいる。
それもいいかもしれない。
だけどこんな曖昧な気持ちが許されるはずがない。
鬼頭を傷つけるのが、目に見えている。
もう、誰も傷つけたくないんだ。
僕は体を横に向けると、鬼頭と向き合った。
「ごめん。困らせること言って。今の忘れて」
鬼頭は早口に言うと僕に背を向けた。