TENDRE POISON ~優しい毒~
「ああそうだ。鬼頭を預かっててくれてありがとう、って一言お礼をいいたくて」
“鬼頭”と名前を出したときに、きのせいかな?まこの肩がびくりと動いたんだ。
ホントにちょっとだけど。
「まこ……?」どうしたの?って続けようと思ったけど、
「ああ、別に礼なんていいよ」
疲れを滲ませた声で、どんよりとまこは答えた。
やっぱり。
相当深刻なようだ。
「ま……」と言いかけて、出し抜けにまこが振り返った。
いつになく真剣な目だ。
「水月、あの女には気をつけろ」
いつか聞いた台詞。
“あの女”って言うのが誰だかすぐに分かったけど、僕は問い返すことができなかった。
鬼頭―――
まこ、と何があったんだ?
まこに何を言ったんだ?