TENDRE POISON ~優しい毒~
「ごめんって何だよ。好きな奴でもいるのか?」
好きな人は……いる。
でも絶対に叶わない恋。叶えてはいけない恋。
許される筈のない恋。
あたしが黙っていると、
「納得いかねぇよ。何でだんまりなんだよ」
と梶は低く声を出した。
「優輝~、サッカーしにいこうぜ♪」
遠くの方で男子が梶を誘う声が聞こえた。
「俺は、納得しないからなっ!」
それだけ言うと、梶はくるりとあたしに背を向けて行ってしまった。
当たり前だよね。
誰だって理由を説明してくれなきゃ納得できない。
あたしは神代が乃亜姉にしたことをやってる。
それは許されないことなのに。
でも、然るべきとき―――
その時が来たら全部話すつもりだ。
梶には反対されるだろうけど。
ううん、あたしのやろうとしてることは明良兄だって反対する。
でも今更引き返せない。
あたしの決心は誰にも覆せない。
それが例え乃亜姉だとしても―――