TENDRE POISON ~優しい毒~
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「「テストお疲れ様~」」
あたしのウーロン茶の入ったグラスと、神代のビールのグラスがコツンと合わさった。
「は~、これで一段落♪」
そう言って神代はおいしそうにビールを飲んだ。
今日は野菜たっぷりのちゃんこ鍋。二人のまん中には鍋が湯気をあげていた。
「鬼頭学年一位おめでとぅ」
「ありがと。ねぇ先生ご褒美ちょうだい?」
「ご褒美?」何を要求されるのだろう、と言った感じで神代がちょっと身を引いた。
「そ。クリスマスイブ、デートしてよ。前言ってたジャン。カラオケ行こうって。先生の好きなあゆ歌ってあげるから」
「デート…?」
神代はちょっと考え込んでるみたいに首を傾けた。
「先生彼女いないんだし、どうせ暇でしょ?」
あたしの発言に神代はムッと唇を尖らせた。
「暇だけど……」
「じゃ決まり!あたしデートって初めてなんだ♪」
「初めて?」
神代が驚いたように目をぱちぱちさせた。
「何よ。悪い?」
「いや、鬼頭はもてるだろうから今まで彼氏がたくさんいたのかな、って勝手に思ってて」
「彼氏なんていないよ。だからデートも初めて」
「そっか」
神代は何やら嬉しそうににっこり頷いた。
最初で最後のデート。
思い出を作って、一生忘れないよう胸に刻んでおくの。
一生……